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TRPGに何を見るか

その3:“テーブルトーク”とは、どういう意味なのか

2013/05/13 初稿

2013/11/29 加筆修正

 TRPGとはTable-Talk Role Playing Game(テーブルトーク・ロール・プレイング・ゲーム)の略であることは皆さんご存知かと思いますが、これが和製英語であることまではあまり知られていないようです。もともとRPGとはアメリカ発祥のテーブルゲームの1ジャンルでした(これが我々にとってのTRPGです)。そしてRPGのセッションにおけるGMをコンピュータに担わせたのがコンピュータRPGで、昔ならウィザードリィシリーズ、最近であればドラクエシリーズ、FFシリーズ、テイルズシリーズなどがこれにあたります。このようにアナログ/ディジタルメディア混在のRPGというゲームですが、最初に日本に伝わったのはコンピュータRPGでした。そのため、日本のゲーム文化ではRPG=コンピュータRPGとなりました。その後、テーブルゲームである本来のRPGが日本に伝わったのですが、先に認知されたコンピュータRPGと区別するために「テーブルトーク」という意味のTを頭に付け「TRPG」と呼ぶようになりました。しかしWikipediaによれば、Table-Talkは英語圏では通じず、Table-Top(テーブルで行う/遊ぶ)と表現した方が通じるようです。アメリカ発祥のRPGを、“テーブルトーク”RPGと名付けてしまった当時のTRPG愛好家は英語の理解が少々足りなかったのかもしれませんね。
 しかし、アメリカ発祥だからといって、また「テーブルトーク」が通じないからといって「RPG」あるいは「Table-Top RPG」という呼称にこだわる必要はないと私は考えます。その理由について“日本文化の特性”と“テーブルトークという環境”の二点から述べてみようと思います。

 まず一点目の“日本文化の特性”ですが、日本は諸外国の文化を積極的に取り入れ、それを独自の文化に発展させてきた歴史があります。例えば、外来語をそのままカタカナ表記にし、外来のファッションを“洋服”として身にまとい、ベースボールを“野球”にし、麺料理を“ラーメン”として独自に発展させてきました。また日本独自の文化を背景に、日本語がそのまま英語になった言葉もあります。例えばKaizen(改善)、Kansei(感性)などは有名です。この“日本文化の特性”である「文化の消化・再創造力」は日本文化の良さではないでしょうか?
 よって「テーブルトーク」という言葉の意味を、日本のTRPG愛好家が再定義し発信したとしても、決して不思議なことではないと私は考えます。

 続いて二点目の“テーブルトークという環境”ですが、私はこの言葉の奥に含まれているコミュニケーション環境に大きな価値があると考えています。コミュニケーション環境とは、大雑把に解説すると方向・位置関係・時間・人数の4つの尺度で分類できます。各尺度とコミュニケーションの成立しやすさについてそれぞれ具体的に挙げると、以下のように分類できます。

【方向】   双方向>一方向
【位置関係】 対面>分散
【時間】   同期>非同期
【人数】   一対一>少人数>不特定多数

 これを踏まえると、例えばTV放送は「一方向分散非同期不特定多数のコミュニケーション」になり、電話は「双方向分散同期一対一のコミュニケーション」になります。またコミュニケーションが一番成立しやすい環境は、「双方向対面同期一対一のコミュニケーション」になり、逆に成立しにくい環境は「一方向分散非同期不特定多数のコミュニケーション」になります。
 さて、話を戻しましてテーブルトークという環境を上記に当てはめると「双方向対面同期少人数コミュニケーション」になります。ところで前回の寄稿で私はTRPGを「参加者が共同で物語を創りあげる」遊びと表現しました。これを字面通り受け取れば方向は「双方向」、人数は「少人数」であることは間違いないでしょう。その一方で位置関係・時間は不定です。実際、チャット・BBSなどのCMC(Computer Mediated Communication:コンピュータを媒介したコミュニケーション)環境でのTRPGも行われていることから、この考えは間違いないと思います。また先に述べたとおり、位置関係が「分散」で、時間が「非同期」な環境はコミュニケーションが困難になることから、CMC環境でのTRPGが難しいのも説明できます。
 よって“テーブルトークという環境”、すなわち「双方向対面同期少人数コミュニケーション環境」はTRPGをスムーズに進めるために極めて重要な要素であると私は考えます。

 以上より、「テーブルトーク」という言葉には、日本のTRPG愛好家が見出した重要な概念があるのではないでしょうか。今後もこの概念を踏まえつつ、皆様と共々にTRPGを楽しんでいけたらと思います。