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TRPGに何を見るか

その1:アイディアを生み出し,評価する能力を鍛える

2010/03/30 初稿

2013/11/29 加筆修正

 私が「N.I.T. Agent」に参加するようになって,はや数年経過しました。
 私がTRPGを始めたのは,大学院2年の頃であり,またこのサークルの存在を知ったのは社会人になってからでした。そのため,年齢の割にはTRPGのキャリアは短く,またサークルメンバーとしてのキャリアは尚短いのですが,それでもTRPG歴10年を越え,いつのまにかベテラン扱いされるようになりました。プレイヤーとして,またGMとしてここまで力が付いたのは皆様のおかげであり,大変感謝しております。
 また某サークルメンバーから,本誌への寄稿を勧められたので筆をとることにしました。乱文ではありますが,しばしお付き合い下さい。

 今日(注:2010年現在)の日本は未曾有の大不況に見舞われ,一応,回復の兆しが見えてきたはいえ,それでも就職・転職が厳しい時世であることは皆さんご存知かと思います。
 不況のきっかけにもなったリーマンショックや,倒産しないと言われていたJALが経営破たんした問題は,結局のところ「アイディアの枯渇」に起因するのではないかと私は考えております。我々人間は,大変飽きっぽい気質を持っており,つい先程まで執心していたものを「ありきたり」「マンネリ」などといって,簡単に捨てていきます。そのため,これまで通用したアイディアが次の瞬間に通用しなくなることが間々あります。それゆえ「新しいアイディア」を生み出すことをやめたら,いずれは,問題に対処できるアイディアが少なくなり,そして「打つ手なし」となるのではないでしょうか。

 ここで,TRPGに目を向けてみましょう。
 GMはシナリオに何かしらの「新しいアイディア」を取り入れています。これはGM本人の欲求から生じることが多々ありますが,時にはプレイヤーやその他からの要請によることもあります。これにより,オーソドックスなシナリオであっても,サンプルシナリオそのままであっても,GMによって様々な違いが見られますし,また同じ人がGMを担当しても1回目と2回目では必ず何かしらの違いとして現れます。
 では,プレイヤーはどうなのでしょうか?
 プレイヤーはPCを作成し演じる際に,やはり何かしらの「新しいアイディア」を取り入れています。これはGMや他プレイヤーからの有形無形の要請であったり,プレイヤー自身の欲求から生じたりします。
 このようにTRPGという遊びは,多分に新しいアイディアが求められるといえるのではないでしょうか。

 またTRPGはアイディアを求められるだけではありません。
 例えば,あるPCが奇抜なアイディアを提案したとき,他の参加者はそれを受容したり拒絶したりします。また受容するにしろ拒絶するにしろ,参加者全員が納得できる理由を何かしらの方法で提示するはずです(提示をしなかったら,それはもうTRPGではありません)。
 つまりTRPGにはアイディアだけでなく,それを評価することも求められているといえるのではないでしょうか。

 ここで冒頭の経済情勢に話を戻しましょう。
 私は「新しいアイディアの枯渇」と述べました。しかし一部の中小企業は,このような時世の中で着実に業績を上げています。そしてそれらの共通点は,何かしらのアイディアを生み出し,それを実行しています。
 つまり,アイディアの枯渇が問題であると私は述べましたが,実際はアイディアを生み出せず,また生み出されたアイディアを正しく評価できないことが,そもそもの問題ではないでしょうか。
 よって,今の我々に必要なのは①アイディアを生み出し,②そのアイディアを正しく評価する,能力ではないかと私は考えています。

 では,その能力をどのようにして鍛えればよいのでしょうか?
 私はTRPGであると主張します。TRPG初心者のうちは指導役が必要ですが,ある程度慣れてくると指導役の出番はほぼなくなります。これは対面授業のように最初から最後まで教員が面倒を見る必要が無いといえます。
 またヨハン・ホイジンガの著書『ホモ・ルーデンス』では,企業活動,議論,そして戦争までもが遊びの延長であると述べており,我々人間は「ホモ・ルーデンス(遊ぶ人)」であると結論付けています。よってアイディアを生み出し,それを正しく評価する能力が育成できる遊びであるTRPGは,まさに理想ではないでしょうか。

 というわけで,これからもTRPGを楽しんでいきましょう!